OPEN LAB.

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光を通して日本人が失っているもの 〜ルートロンインタビュー〜

なぜ調光が必要なのか考えた事がありますか?
照明器具と切っても切れない関係にある調光器。「難しい」「ややこしい」「高い」といったイメージを持っている方も多いと思います。そもそも調光はなぜ必要なのか。世界最大の調光メーカーであるルートロン社に伺い、谷崎営業技術部長 兼 プロダクトマネージャーに「調光と光」についてインタビューしてきました。

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谷崎営業技術部長 兼 プロダクトマネージャー

 

調光を開発したのはルートロン

-ルートロン社はどんな会社ですか?

アメリカの調光器メーカーです。世界100カ国以上に輸出しており、アジア、ヨーロッパ、北米を中心に15の事務所があります。現在アメリカでは約15000種類の製品ラインナップを持っています。実はルートロンは世界で初めて調光器を発明したメーカーでして、白熱灯用調光器も蛍光灯用調光器も最初は当社が開発したんです。

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ルートロン社の調光器

-調光器メーカーの先駆けなのですね、ルートロンの調光器はどういった場所で使われていますか?

有名どころですとホワイトハウス、自由の女神、エンパイヤステートビルなどです。アメリカでは60%以上のシェアがあるので本当に色々なところで使われています。

-日本でも照明設計の方から「調光器はルートロンで」という指名が多いですね。なぜでしょうか?

一番の理由は各照明メーカーとルートロンとの間で適合チェックがされていることが多いからです。色々な照明メーカーと組み合わせができるので、設計者も安心して選べます、そういった点が支持されているのだと思います。

-日本法人にはルートロンアスカという名前が付いています、このアスカってどういう意味なのでしょうか?

会長の意向で各国の支店にその地域らしい名前をつけています、日本の場合は飛鳥時代から取ったんですよ。

 

調光でエネルギー消費を抑える

-どんな場所で調光システムが使われることが多いですか?

規模が一番大きいのはホテルです。共用スペース、レストラン、廊下、エントランスといった空間で調光システムが使われています。もしこうした空間で調光ができないと、明るすぎてホテルの高級感にそぐわないという問題が出てきます。件数が一番多いのはオフィスです。例えば、エントランスなどは、太陽と同じ様に昼間は明るく、夕方になると暗くしていき、夜になると更に暗くして常夜灯として使われています。また、会議室ですと「通常モード」「プレゼンモード」「電話会議モード」とシーンによって光を分けます。例えば、プレゼン中に明るいままですとスクリーンが見えないですし、逆に真っ暗ですと手元の資料が見えません。そこで調光を使ってスクリーンも資料もどちらも見やすい明るさに調節するんです。

-オフィスでも光の使い分けをするんですね。

はい、そうです。オフィスで印象的だったのが、2007年竣工のアメリカのニューヨークタイムズの本社です。ここもルートロンで照明を全館制御しているのですが、このオフィスのワークスペースはとにかく暗くて机上面の明るさは300lxです。

-それは暗いですね。日本のJ I S規格ではオフィスの机上面の推奨の明るさは750lx以上です。

そのかわり机の上はスタンド照明などで補っています。このオフィスはオールガラスで、中に太陽の光が入ってきて空調効率がとても悪いんです。そこで昼間はカーテンを下げて、眩しくない程度に外光を取り込んでいます。

-空調効率を考えつつ、外光も取り込んでいるんですね。

はい、そして照明の明るさをギリギリまで下げるんです、省エネのために。そうする事で全体のエネルギーの削減につながります。実は机上面の明るさも最初は300lxよりもっと明るかったんです。

-最初は明るかった?

一週間単位でだんだん暗くしていったんです。今週は400lx、来週は370lxといった具合に。社員から文句が来るまで下げるんです(笑)結果、落ち着いたのが300lxでした。

-その発想は日本にはないですね。

日本のオフィスは明るすぎます、オフィス全体がこんなに明るい必要はないと思っています。これにより照明全体で70%の省エネにつながりました。アメリカにはLEEDという規格があって、施設に対する省エネ要求がすごく厳しいんですよ。

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ニューヨークタイムズ本社ビル


 

音楽や温度は調節するのに、光だけしないのはおかしい

-調光は省エネにつながるんですね。

そうです。しかし、それ以上に私が感じる調光の良さは「心地よさ」だと思います。日本人は調光による心地よさをまだまだ知らないのかもしれません。

-日本と欧米では光に対する考え方が違うのでしょうか?

日本では近年まで「明るいのが良し」とされていたため、光を楽しむ文化がまだまだ根付いていない印象ですが、アメリカやヨーロッパに行くと光の文化をすごく感じます。特に住宅では隅から隅まで明るい場所がなく、必要なところに必要なだけの明るさがあるんです。部屋の中心に大きなシーリングが1つあって隅々まで明るいのは日本独特の文化ですね。

-そういえば最近知り合いが家を建てたんですが、「家は調光しているの?」と聞いたら「調光って何?」って言われました。日本ではまだ調光という言葉が浸透していないと実感しました。

そうですね、でもアメリカ人も実はそんなに「調光」を意識していないのかもしれません。アメリカはどこのホームセンターにもルートロンコーナーがあるんです。家に調光器があるのが普通、DIYで自分で調光器を付けるのも普通で、照明を買うことと調光器を買うことがセットになっている印象です。逆に日本では、せっかく調光システムを入れたお店でも実際の運用ではON/OFFの切り替えだけというケースもあります。調光を知らないという事は、省エネという事もそうですが、他にも失っているものがあると思います。日本は物理的な豊かさはあるけど、精神的な豊かさが足りないかなと感じています。アメリカのレストランはとにかく暗いです。ただその暗さゆえにとてもリラックスできます。日本は必要以上に明るい場所が多くリラックスしにくいんです。

-調光以外にも日本の住宅では白色系の照明が多い印象があります。

アメリカの住宅で白色系はほとんど見られず、大体が電球色ですね、そちらの方が落ち着くのだと思います。光を楽しみリラックスするという部分も精神的な豊かさにつながっていると思います。

-日本の方が落ち着ける光空間が少ないのはなぜでしょうか?

日本には昔から光の心地よさを感じる場所が少なく、その良さがまだ浸透していないのかもしれません。オーディオや空調なども生活空間に心地よさをもたらすものに調節機能が付いている事が当たり前です。「照明だけ調節ができないのはおかしいのではないか」とルートロンは考えています。

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調光で世の中はどう変わるか

-ルートロンの最新製品について教えていただけますか?

エコシステム*1という調光システムです。
元々アメリカでオフィス照明用として開発されました。

-これまでの調光システムとは何が違うのでしょうか?

最大の特徴はアドレス設定ができることです。他にもアドレス設定ができるシステムはありますが、適合保証という大きな問題がありました。エコシステムはルートロンで適合保証しているので照明器具メーカーの垣根を越えられるんです。各メーカーごちゃ混ぜで使うことができるので設計者の選択肢が広がります。

-アドレス設定ができる事でどんなメリットがあるのでしょうか?

簡単に照明ゾーンのグループ変更をできる事がメリットです。よくあるのが、設計者はこのグループでいいと思っていたが、実際に現地に行ってみたら、壁や家具の位置が図面と違っていた。そういう時は当然、調光ゾーンのグループ変更の希望が出てきます。今までだと、配線で照明ゾーンのグループ分けが決まっています。つまり配線後は照明ゾーンのグループ変更ができないという問題があったんです。しかしエコシステムを使えば、配線ではなく調光器本体での設定で照明ゾーンのグループ分けができるので、配線後でも簡単にグループ変更でき、この問題を解決しました。

-確かにオフィスなどでは数年単位でレイアウト変更がありますから、そうした時に便利ですね。

竣工前はもちろん、いつレイアウトが変更になっても簡単に対応できます。更に、以前に比べて必要機器が減ったのでシステムをスリム化できコストも抑えられます。

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エコシステムのメリット

 

-今後調光システムはどう変わっていきますか?

現在ルートロンは、アップル社が進めている「HomeKit*2」に参画しています。
「HomeKit」とはiOSデバイスと家電をつなぐためのプラットホームです。このHomeKitは家全体の色々な設備を集中制御する機能を持っており、現在オーディオ、エアコン、カーテン、鍵など各業界のメーカーが関わっています。実はルートロンはアップルと非常に大きなつながりがありまして、Apple Watchに「Lutron Home+」という標準アプリも入っているんです。

-HomeKitで具体的にはどんな事ができるのでしょうか?

例えば、iPhoneアプリで「Good morning」と押すとカーテンが開いて、コーヒーが湧き、エアコンや照明がONになります。「起床」「帰宅」「就寝」などシーン毎に最適な住空間をiPhone一つでコントロール出来る様になるんです。これはこの2、3年で普及が進むと思います。あまり知られていませんが、私たちは電動カーテンも作っています。つまり照明の光だけではなく、自然光のコントロールもできます。ルートロンはその両面から光をトータルに提案できる数少ない企業なんです。

-これから調光の重要性は変わっていきますか?

10年後、日本では調光が今より一般的になっていると思います。例えばシーリングは、昔は段調光などできませんでしたが、現在ではできるのが普通です。パブリックな場所でも光にこだわった現場が増えていますし、住宅照明に関しても電球色の照明を使う家庭が増えています。一般の人がもっと光を楽しむ機会が増えるようにルートロンも頑張っています。光を楽しむことは精神的な豊かさにつながります。是非、調光を通じて日本でも光を楽しむ文化が根付いて欲しいです。

 

担当者あとがき

インタビュー後、気になって都内のタワーマンションの光の色を数えてみました。結果は電球色が144部屋、白色が27部屋。日本の住宅照明には白色が多い印象がありましたが、想像以上に電球色の割合が高く、日本人の照明への意識が以前と変わって来ている事を実感しました。これまで多くの日本人は質の高いソファや家具を欲しがる反面、谷崎氏のコメントの様に「照明器具は明るければ良い」という意識があったと思います。一般家庭においても、光の質の高さを求める社会に変わって行くことを期待し、TOKISTARもその一翼を担えればと思っています。

 

ルートロン アスカ株式会社
HP:http://www.lutron.jp